このコーナーでは、医療を少し離れて、自分自身のことや身の周りの出来事についてお話ししようと思っております。さて、

今回は「食の細い子」のこと・・・です。essay12-1

日常の診療の場や健診をしているときに、聞かれることのひとつに「たべないんです。どうしたらいいでしょう?」ということがあります。これに対して、お答えはひとつ。「どうしようもないです・・・」

冷たいようですが、本当にどうしようもないのです。実はこれは私の実感です。我が家の末っ子は、本当に食欲という欲はあるの?というぐらいしか食べません。上の子達は、それぞれ離乳食も良く食べましたし、今でも食欲があり、子供の定番「おなかすいた」を連発する子達です。おなかすいてるときの食べっぷりといったら、見事なもの。そんな兄姉に囲まれて、次女は・・・・

essay12-2次女は、口だけは達者です。「今日のごはんなに?」「カレーだよ」「わぁ、うれ しい。カレー大好き。沢山食べられそう」と口だけは大活躍。ところがいざ食事が始まると、箸は遅々として進みません。口はおしゃべりばかり。みんなが食べ ているのに、一人でしゃべって場を盛り上げます。見かねた私が「しゃべらずに、食べなさい」と毎回注意しなくてはいけないのです。そして、他の人の食事が 終わるころ、少しずつ食べます。でも、すぐに辺りを見回し「もう食べられない。もういいかな?」本当に量は少なく、仏様にお供えするぐらいのものです。 「わたしの口は食べるためにあるんじゃない。しゃべるためにあるんだよ」とは次女の弁。

この子を育てながら、食べない子がいること、食べない子は無理に食べさせられないこと、でも、ちゃんと大きくなっていくこと・・・を学びました。次女は2年生になりましたが、あまり病気もせず、運動も大好きで、元気いっぱい。体は小さく、クラスでも一番前だそうですが。

実は私も心配して、先輩の先生に相談したことがあります。その先生はこういいました。「うちの娘も食べなかったよ。でもちゃんと大きくなって大人になった今では、ダイエットのことばかり言っている・・・」ですから、我が家でも見守ることにしました。ただ、母親の立場から言わせてもらうと、 どんなにごちそうをつくっても「お残し」。「くそー」と腹が立つのは否めません。だから、お母さんたちの気持ちもよくわかります。なんとか食べさせてみた いもの。そしてもりもり食べたあとに「おかわり!!」の声を聞いてみたいものです。  (2006.5.12)essay12-3